自動化からさらなる飛躍へー Blue Prism・マイクロソフトに聞く 【前編】

多種多様なデジタルテクノロジーの中でも、ここ数年際だった勢いで普及してきたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、 米調査会社ガートナーによると“幻滅期”の底を打ち、本格的な普及期に移り始めたという。

そうした状況下、2012年に「RPA」の呼称を提唱した“本家本元”のテクノロジー・ベンダーであるBlue Prismの日本法人は、2021年の年頭メッセージで「RPAを卒業しインテリジェント・オートメーションに向かう」と宣言し、訴求のアプローチを大きく転換。一方、いわゆる「ビッグ・テック」の一角ながら、2019年1月発表の「Microsoft Power Automate」でRPA市場に本格参入したマイクロソフトは、この分野の“新顔”として注目を集めている。

国内RPA市場、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の重要なプレイヤーである2社がいま何を考え、どのような将来展望を描いているのか。本稿では、両者とパートナーシップを結び、RPA導入を早くから手がける日商エレクトロニクス株式会社の事業責任者を交えた座談会の模様を紹介する。

目次

コロナ禍で生かされたBlue Prismとマイクロソフトのパートナーシップ

青木 俊氏(日商エレクトロニクス株式会社 DX第二事業本部 本部長)

青木 俊氏(日商エレクトロニクス株式会社 DX第二事業本部 本部長):今回は、機能や仕様の細かな違いはいったんおき、RPAに対するBlue Prism、そしてマイクロソフトのビジョンや価値観、目指す方向性について、それぞれの立場からお話しいただく機会にしたいと思います。まずお二方から、簡単な自己紹介をお願いできますか。

小林 伸睦氏(Blue Prism株式会社 Japan CTO 兼 製品戦略本部長):私は日本におけるBlue Prismの製品戦略の責任者としてロードマップを策定するとともに、お客様やパートナー企業の方々からの声を英国本社の研究開発部門にフィードバックし、製品に反映させることをミッションとしています。

川端 祐人氏(マイクロソフト コーポレーション ビジネスアプリケーション事業本部アジア グローバルブラックベルト テクニカルスペシャリスト):私は、マイクロソフトのビジネスアプリケーションである「Dynamics 365」(クラウドCRM/ERP)と「Power Platform」(ローコード開発プラットフォーム)のうち、Power Platform専任でアジアタイムゾーンでの技術営業を担当しています。前職のNTT研究所ではデスクトップ型RPAツール「WinActor」や「BizFront/アノテーション」の研究開発に初期から関わり、RPAという言葉がまだない10年以上前から、人の作業を代替する技術(デジタルレイバー領域)の普及に取り組んできました。

マイクロソフトのRPA「Power Automate Desktop」は、Power Platformのひとつで、さまざまな自動化を提供する「Power Automate」に含まれています。Power Automateによる自動化のアプローチが多岐にわたる中、特にRPAに関心を持つ方々からPower Automate Desktopに注目いただいているのを、日々実感しています。

青木:グローバルの製品戦略において、両社の提携関係はとても緊密ですね。内容も多岐にわたると思いますが、概要をご説明いただけますか。

小林:まず分かりやすいところでは、Blue Prismの試用版をマイクロソフトのオンラインストアである「Azure Marketplace」(ITソリューションが対象)や「Microsoft AppSource」(ビジネスソリューションが対象)から入手いただけるといった、販売レベルでのパートナーシップがあります。さらにBlue Prismは、従来のRPA基盤にAIの機能を組み込むインテリジェント・オートメーションの観点でも、クラウドサービス「Microsoft Azure」と協業しています。

具体的に言うと、現在私たちが提供するクラウド型のデジタルワーカーサービス「Blue Prism Cloud」は、前身のサービスが登場した2013年から一貫してAzureのプラットフォーム上に構築されています。このサービスは、画像認識や自然言語処理など、Azureが備えるさまざまなコグニティブ機能を瞬時に引き出し、従来のRPA基盤と一体化した形で、インテリジェントな自動化をサービスとしてご活用いただけるようになっています。

川端:マイクロソフトとBlue Prismの協業体制が生かされた直近のユーザー事例としては、新型コロナウイルスの感染歴を調査するために英国の公的医療機関が行った、抗体検査の事務手続における一連のプロセスを自動化した事例が挙げられます。

これは「Microsoft Forms」で作成したWeb上の問診票を通じ、血液検査を希望する人の基本情報や、優先順位の判断材料となる資格情報をスマートフォンなどから入力できるようにしたものです。申込者から得た情報は、医療機関の予約システムを通じて患者データベースに関連付けて登録され、優先順位の判断と施設の空き状況を踏まえて予約が完了すると、通知のメールが返信される仕組みです。

Azureを基盤とするBlue Prism Cloud、そしてオフィススイートの「Microsoft 365」や、オンライン予約ツール「Microsoft Bookings」を併用したことで一連の流れは完全に自動化され、4週間に2万件以上の予約が、医療スタッフによる直接対応を必要とせずに処理できました。

小林:この抗体検査に関しては、合計5つのプロジェクトでBlue Prism Cloudが用いられ、感染拡大初期から6週間のうちに、200週間分の検査時間に相当する7,400時間以上の余力を医療スタッフにもたらしました。大きな環境変化に即応する形で膨大な労働力をタイムリーに実装したことで、スピーディーな抗体検査を実現しつつ、オンライン化と完全自動化で感染拡大防止にも貢献できた点に、大きな意義があったと思います。

ビジネスでも同様に、急激な環境変化に即応し、自動化された労働力を最適な形で実装できることが競争優位につながります。そのための仕組みを提供できるのが、Blue Prismとマイクロソフトのパートナーシップだと考えています。

長期安定運用の体系的手法でビジネス変革を支援。「RPAを卒業」するBlue Prism

小林 伸睦氏(Blue Prism株式会社 Japan CTO 兼 製品戦略本部長)

青木:突発的に生じた膨大な事務処理への対応は、素早く実装できるRPAと、処理能力をフレキシブルに調達できるクラウドの強みが、そろって発揮できる場面ですね。

川端:そう思います。RPAやクラウドサービスとの連携、そしてプログラミング知識を必要としないローコード開発のアプローチは、公共分野だけでなくエンタープライズのビジネス領域でも、スピード勝負の重大局面で貢献できることが多いと考えています。日本においてもコロナ対応関連では、定額給付金の申請状況を把握できる市民向けのポータルや健康相談チャットボットをPower Platformで実現した神戸市の例などがあります。

青木:RPAのユーザーが明確な活用イメージを持つには、それぞれの製品コンセプトへの理解が重要となります。この点についてもうかがえますか。

小林:はい。もともとBlue Prismは、英国の金融機関バークレイズの多様な業務プロセスを自動化するために開発された経緯があり、安全で安定的、かつ確実な監査証跡も残す形での処理と、現場のユーザーが手元で操作しなくてもよい完全な自動化を本来のコンセプトとする製品です。さらに現在は発展を続け、AIをはじめとするインテリジェンスや自動化関連テクノロジーと瞬時に連携し、多様な自動化をくみ上げられるように設計されています。

「Robotic Operating Model(ROM)」という、自動化の効果を最大化するための導入ノウハウを体系化してきたのも大きな特徴で、こうした点もエンタープライズ用途で支持されてきた理由だと思います。

青木:導入の目的を定めるところから運用にあたって必要となる組織体制までを含め、Blue Prismを使いこなす方法論が詳細にまとめられているROMは、われわれ日商エレクトロニクスの親会社である双日株式会社へのBlue Prism導入の際にも、非常に役立ちました。

確かにBlue Prismは、製品も、運用の指針も、かっちり堅牢にできている。ただそれだけに、一般には「難しそう」という印象も持たれている気がします。実際のところはどうでしょう。

小林:Blue Prismはもともと、作業の一部を置き換えて時短効果を積み上げる使い方よりも、業務プロセス全体の自動化を念頭に置いてきました。

加えて直近では、手早く一定の効率化が見込める便利ツールという意味合いで広まってしまった RPAから“卒業”し、インテリジェント・オートメーションを目指すというのが日本法人の方針となりました。これは、変化に即応し、ビジネス変革を行うことが必要であり、その変革には、AIなどのインテリジェンスが重要であることを強調しています。

いずれにしても、事業変革に対する長期的なビジョンのもとで継続的にご利用いただくのが望ましい製品ですから、やや大がかりで取っつきにくいイメージがあるのかもしれません。ただ、ツールの操作は決して難しいものではなく、企業の自動化基盤として業務プロセスをまたがってご利用いただく前に、事業部門のPC1台で実装や運用を始めることも十分可能であり、こうした柔軟性もご理解いただきたいと考えています。

「全ての人にインテリジェントな自動化を」。ローコード開発を推進するマイクロソフト

川端 祐人氏(マイクロソフト コーポレーション ビジネスアプリケーション事業本部アジア グローバルブラックベルト テクニカルスペシャリスト)

青木:開発の担い手という点では、Power Platformは、IT部門にとどまらない「市民開発者(Citizen Developer)」を増やす狙いが明確な製品ですね。

川端:はい。マイクロソフトは「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上の全ての個人と全ての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」という企業ミッションを掲げていますが、特別なITスキルがなくても業務アプリケーションを作成し、業務変革を推進できるPower Platformは、まさにこうしたコンセプトを体現した製品といえます。

マイクロソフトの企業ミッションを体現したローコードプラットフォーム「Microsoft Power Platform」

その中でもPower Automateは、API(Application Programming Interface)によってマイクロソフト内外のサービスと接続できるコネクタを持ち、複数のクラウドアプリケーション間のシステム連携を、ローコードで自動化できるソリューションです。既にMicrosoft 365などのMicrosoft製品はもとより、FacebookやSalesforceといった他社製品も含む400種類以上のアプリケーションとの接続に対応しています。

一方、APIが提供されていない社内システムなどとの連携には「UI Flows」という機能を用意していたものの、RPAとして実現できるレベルに課題がありました。そこで2020年9月にリリースし、12月に一般公開されたのがPower Automate Desktopです。

Power Automate Desktopのベースになっているのは、マイクロソフトが買収したSoftomotive社のデスクトップ型RPAツール「WinAutomation」です。以前からWinAutomationをお使いの方はご存じかもしれませんが、Softomotive社は2005年にギリシャで設立された老舗のRPAベンダーです。定評あるRPAツールにローコードソリューションとしての機能を充実させてアップグレードしたことで、事業部門の担当者が自身で自動化を実現できる環境が整いつつあります。

小林:自動化プロセスの最適化を図る上では、業務に関わる方々の声を広く反映することが大切です。そのためBlue Prismでは、ユーザー企業のIT部門にとどまらず、業務を理解されている事業部門の方々からもお話をうかがうようにしています。

双方のご要望をどこまで実現するべきか、バランスを見極めることは導入効果を最大化させるために重要であり、お客様やプロジェクトによってもさまざまです。この点についても、先に述べたROMの導入方法論を活用してご支援しています。

またROMでも示されているとおり、自動化は一度やって終わりではなく、その後の変化に応じて継続的に最適化を追求していくこととなります。 そこで最適化のポイントを把握する手がかりとして、インテリジェント関連技術との連携も重要だと考えています。

青木:RPAによる業務自動化を起点に、高度なテクノロジーの成果を誰でも生かせる環境が整いつつあるということですね。そうした可能性を生かし、日本企業におけるDXを推進することはできないか、引き続きお二方の見解をうかがいたいと思います。

次世代のRPA活用とは。 Blue Prism・マイクロソフトに聞く【後編】へ続く

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